とある日、エンジンを切って車から降りると何かクーラント臭い。
ボンネットを開いて確認すると、エンジン左側のオイルクーラーからパイプにつながる
短いホースにクーラントが漏れが起きエンジンブロックの段差にクーラント溜りができていた。
この溜まりがエンジン熱で蒸発してクーラント臭を漂わせている。
早速このホースの品番を調べ部品を調達したのはよいが、何となく興が乗らず作業を放棄。
「急にドバー!となることは無かろう」という根拠なき言い訳を唱えつつ
時々クーラント量を確認し、減った分を少しずつ補充し、気がつけばかれこれ、6ヶ月以上。
降りるたびにクーラントの臭いがしていたが、様子を見つつ放置していた。
心地よい季節になった事もあり、ずっと放置も良くないのでちゃちゃっと交換してしまおう!
と思った矢先、、、そんな世の中甘くはない。意外に作業が困難であることに気づいた。
車いじりのあるある。だいたい予想もしない所でつまづく。
興が乗らなかったのは無意識の予知だったか? 重作業を伴う予感。。
長さわずか70mmのホース交換の為に重作業が伴ってしまうのか!
長さわずか70mmのホース交換なんて、何としても楽に簡単に作業したい!
ホースの状態を確認しようとホース中心部分を揉んでみたときに、短いホースが故の困難に気がついた。
つまりこういうことだ。(わかりにくい図で申し訳ない)
赤い部分で示すのはホース内のアウトレットプラグとパイプの様子。
左側がオイルクーラーのアウトレットプラグで、右側はEGRクーラーへ向かう金属のパイプ(EU3仕様)。(EU3仕様外はラジエータロアへのリターン)
プラグとパイプは金属製で、非常に(非情に)狭いクリアランスで且つ固定されている。
青い部分はホースの位置。
ホースを外そうと、黄色の線の様に限界までずらしたところで右のパイプ側はとてもじゃないけど抜ける状態にはならない。
金属のパイプ側はホースが動かないように盛り上がった止めが加工されているので、右側へも動かせない。
ホースを切断してしまえば外すことはできるが、その後新品を取り付けることはまず不可能。
かなり無理すれば可能かもしれないけど、無理して新品のホースを傷めると、またクーラント漏れで元の木阿弥。
こうなると、オイルクーラーを外さないと小さなホース1個の交換すらできないのか?
Workshop Manual でオイルクーラーの取り外し方を調べると
オイルクーラーを外すためには、セントリフューズフィルターをアッセンで外す。
セントリフューズフィルターをアッセンで外す為にはターボチャージャーも外し
エアコンのコンプレッサーも半外ししてずらさなければならない。
更に、オイルフィルターもアッセンで外さなければならず。
この作業するためには、クーラント全量交換とオイル全量交換も伴い
各種ガスケットなど数種類を調達しなければならない。
わずか70mmのホース交換の為に「時間」「労力」「出費」と、そこまでするのはできれば避けたい。
色々思案した結論、そんな重作業はせずともこのホースの交換が簡単にできる道筋が見えた。
金属のパイプはエンジン後方を通ってエンジンブロック右側へ巻くようにEGRクーラーへ向かう。
金属パイプだから動かせないという先入観があったが、こちらをずらして
アウトレットプラグとパイプのクリアランスを取ることができ、重作業せずとも交換できた。
では、次から作業を紹介する
作業はこのままでも出来ない事はないが、修理箇所を目視できないし安全確実な作業のために、最低限のものは外す
-アコースティックカバーを外す-
写真向きだと、左に1個、右に2個のボルトで
留まっている、頭サイズ13mmのボルトを外す。
ワッシャーもあるので落とさないように注意。
オイルのディップスティックをひっかけないように
カバーを上に持ち上げて取り去る。
-エアフロセンサーのコネクタを外す-
針金状のクリップを上に引き上げコネクターを外す。
クリップは真ん中を引っ張りがちだが
それやるとまずは勢いで完全に外れる。
片方ずつ慎重に引き上げれば
いいトコでカチッと固定されるトコがある。
-エアインテークダクトを外す-
エアクリーナBOXにあるインテークダクトの
左右のクリップをリリース。
ダクトホースをエアフロメーターごと
左右にコジコジと引っ張ると外れる。
作業中にダクトが邪魔になった時
フレキシブルなので避けられてよい。
-ヒートシェイドを外す-
エンジン上部 頭サイズ8mmのボルト2本。
タービン後方 頭サイズ10mmのボルト1本。
10mmボルトはタービン筐体に直接留まっている。
ヒートシールドを放熱板としても利用か?
-タービン後方10mmボルトはアクセスしにくい-
10mmのボルトは後方の穴からアクセスする。
65mm程度のエクステンションを介して
もう片側の手をヒートシェイドの下から突っ込んで
ソケットをボルトまで導くとよい。
-熱で傷んだ(?)10mmボルト-
20年ほど一度も触れた事さえないのに
外すとき若干ナメってしまう程傷んでいた。
タービン直で熱の影響だけでここまで傷むのか。。
手持ちのツバ付きM8ボルトに交換しておいた。
ヒートシェイドを外すときは火傷に注意。 エンジン停止直後などは危険! できればエンジンが冷めてから作業。 充分注意して!
-ヒートシェイドを外した図-
ヒートシェイドは手前に引いて外す。
インテークダクトを手前に避けながら少し知恵の輪。
ピンクの矢印がずらしたい金属のパイプ。
エンジンの後方を通ってエンジンを巻くように
前方のEGRクーラーへ向かう。(EU3仕様)
-金属パイプの固定を外す-
固定箇所はエンジン後方の印位置2箇所。
頭サイズ13mmのボルトで
クラッチハウジングと共締めされている。
写真右の固定金具だけ外せば動くと思ったが
びくともしないので2箇所とも外す。
-ホースクリップをこちらに避けておく-
ホースクリップを外して後方へずらしておく。
これでホース交換の準備完了。
-傷んだホースを撤去-
金属のパイプは動くようにはなったが
結構力要るし少しだけしか動かせない。
それでもホースを外すのに必要な程度は動かせる。
真後ろというより、後ろ斜めみたいに動かすと吉。
ホースを外すとクーラントがある程度は流れ出す。
-傷んだホースは-
亀裂などは特に無く、硬化しているでもなく
弾力は新品とほぼ変わらない状態だった。
ただ、広い方の口の径が少し広くなっていた。
-排出されるクーラントの量は?-
この作業で抜け出したクーラントの量は
下に敷いたウエスに吸水された分も含めると
ほぼ500mlのペットボトル1本満たないほど。
作業中ずっと流れ出ることはないので
慌てるな。
-新しいホースを取り付ける-
新ホース装着前にまずは
金属のパイプ側にクリップを2つ掛けておく。
これ忘れがち。 クリップは太細あるので注意。
左が太、右が細の順で掛けておく。
装着部分を軽く清掃して新ホースを装着。
-クリップをしっかり留め、清掃-
元位置と同じところに位置調整。
クリップを確実に留める。
クーラントが漏れた箇所をキレイに清掃。
エンジン後方の頭13mm固定ボルト2箇所締め付け。
規定締付けトルクは50Nm。
-外したものをすべて戻して-
コンビニ往復くらい走行すると
エクスパンションタンクのクーラントは
ピンクの破線くらいまで減ったので補充。
エアはそのうち自然に抜ける、、だろう。
半月経過しても、もう減ることはなかった。
なぜ漏れるようになったかはよくわからない。
「ホースの劣化」ということだろうか。
今回の部品はLR純正品。
品番は PBH101980 クリップも付属してくる。
ゴム系部品は金額が多少高くても純正が安心。
ホースの外径が 片側太、片側細 という変形ホースのため
その辺の汎用のホースで代用というわけにいかず。。
新品に交換して1ヶ月経過、漏れはしっかりと止まりました。
この記事でお気づきの方もいるかも知れませんが、クーラントがピンク色をしています。長寿命タイプのクーラントを使用しています。
クーラントの色は、赤・緑が従来からあるLLC(ロングライフクーラント)
昨今よく使われる、青・ピンクは長寿命タイプLLC、もしくは長寿命のスーパーLLCとなっています。
同じ長寿命タイプのものでも、「スーパーLLC」「スーパーロングライフクーラント」と謳っているものは成分が異なります。
通常のLLCと”スーパー”を謳っていない長寿命タイプLLCの成分は”エチレングリコール”
一方、スーパーLLCの成分は”プロピレングリコール” です。 近年の車はこのスーパーLLCが指定されていることが多いようです。
「古い車にスーパーLLCを入れると漏れを起こすことがある」 と言われていますが、これは都市伝説でもなく根拠があります。
自動車に使われるOリングやパッキン類はニトリル製が多いと思います。
スーパーLLCの成分の”プロピレングリコール”は、ニトリルという材質への攻撃性が強いと言われています。
ですので、通常のLLC指定車の場合、Oリングやパッキン類の対策がされていないため「スーパーLLCは不向き」ということになります。
通常のLLCが指定されている車に、青やピンクのLLCを使用したい場合は成分を確認するなど注意が必要です。
青やピンクでも成分が”エチレングリコール”の長寿命タイプなら問題ありません。
逆に、近代の車の修理を行う場合、安易に汎用のOリングやパッキン類を使用すると不都合が起きるかもしれません。
対策された純正品を使用しなければならない可能性がある、もしくは汎用品の場合は対応材質の類を使用しなければならないかもしれません。
参考にしたwebサイト
パッキンランド エ~え - ゴム - 耐薬品性、耐溶剤性、耐油性一覧表
パッキンランド フ~ふ - ゴム - 耐薬品性、耐溶剤性、耐油性一覧表
参考までに、ディフェンダーTd5 の Workshop Manual には以下の様に指定されています。
エンジン冷却水
Havolene Extended Life Coolant(XLC )、または他の有機酸系(OAT)防錆剤入りのエチレングリコール系不凍液(メタノールを含有しないもの)
を必ず使用してください。 –36℃までの凍結防止のため、不凍液と水を1 :1 でお使いください。
この記事のREEの車両は、エチレングリコールの長寿命タイプLLCを使用しているのでピンク色をしています。
エチレングリコールは毒性が非常に強いです。おすすめしませんが、舐めると甘いです。甘いので動物や赤ちゃん、子どもなどには本当に注意が必要です。
映画のマッドマックスの悪役が冷却水をボトルごとラッパ飲みしているのを思い出しました 変態ですねw
一方、プロピレングリコールは毒性が非常に低く食品添加物にも使用されるそうです。無味無臭とのこと。
環境に良いということで近年での冷却水はエチレングリコールからプロピレングリコールに置き換わっているのですね。
このサイトは主に ランドローバー・ディフェンダー110(2005年Td5)のメインテナンスや改良などの情報サイトです